累進るいしん)” の例文
殊に、お縫とのあいだにも、子が生れ、彼自身も大人おとなの域へ近づいていった。宝永元年、徒士頭かちがしらにすすみ、同五年、目付役に累進るいしんした。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがはずみとなって思索から思索へと累進るいしんするときに、層々の闇の中にときどき神秘なうす明りが待受けていて何か異香らしいものさえ鼻にくんじた。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その栄達えいたつにあきたらず、ちょうをたのんで、諸兄を退け、皇太子の廃立を行い、陰謀によって敵を平げ、その兄すらも退けた。あとを襲って右大臣となり、二年の後に、太政大臣に累進るいしんした。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかしここでは『夷堅志』の作者たる洪邁一人について少々申し上げますと、彼はあざな景盧けいろといい、もちろん幼にして学を好み、紹興しょうこうの中年に詞科に挙げられて、左司員外郎さしいんがいろう累進るいしんしました。
それは、良人の累進るいしんに、自分の教養が——劣らない妻としてゆくことが、ともすれば、追いつけなくなりそうな点であった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧ろかの女の男女的の情熱は結婚後にわたしに向けて累進るいしんして来るようである。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、受賞のよろこびよりは、むしろ母の妙光尼のために、胸なでおろして、森一家の累進るいしんを、ひとり祝っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張文遠にすれば、宋江は憎い女讐めがたきだし、上役ながら、日頃の余りに良い彼の評判をくつがえしてくれたい気持ちやら、またその椅子いす累進るいしんの野心なども手伝っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)