素迅すばや)” の例文
と、いうふうに一つ頷いて見せた後、他の稚子たちを追って、さっと、おそろしい素迅すばやさで、駈け去ってしまった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例によって素迅すばやいもので、もちろん、あとに煙管きせる一本でも、足のつくようなものを残して置くブマな真似はしないで、スワと立って、スワと消えてしまった鮮かな脱出ぶりは、手にったものです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その間に猴素迅すばやく頬嚢に盗品をげ込みたちまち籃を遠ざかる。
四、五間先の砂利置場の蔭、そこから、じっとこっちをみつめたのは、この辺りに下屋敷のある蜂須賀家の森啓之助けいのすけ——例の素迅すばや仲間ちゅうげん宅助たくすけを後ろにつれて。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとはどこを伝い、どこを跳び去ったか、根が白浪のお家芸の素迅すばやさ、それっきりもう行方は知れない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそろしい素迅すばやさで、彼の手に引出されたのは、鮎川の乾分こぶんらしい男だった。——声を立てないのは、死んでいるのではなく、強く首の根を締めあげられているからで
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小娘はおそろしく素迅すばやいのである。後も見ずに、彼方むこうへ駈け出してゆく。帯のひもたもとに付けている鈴でもあろうか、躍ってゆく影につれて、なぶるようながして、二人の耳へ妙に残った。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなさん、せっかくお助太刀を願いましたが、弟野郎は、逸早いちはやく風を食らって、ごらんのように、もうここにおりません。なにしろ素迅すばやい奴ですから、きっと、他県へ高飛びしてしまったんでしょう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何で、かくも素迅すばやく、あれだけの大軍が逃げ去ったのか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)