精魂せいこん)” の例文
正成もいつかしら共にのみを持って一刀一刀に精魂せいこんをうちこめているような境地にひきこまれるのがつねだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あっしもきょうまで、これぞとおもった人形にんぎょうを、七つや十はこさえてたが、これさえ仕上しあげりゃ、んでもいいとおもったほど精魂せいこんうちんださくはしたこたァなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
次郎は学校に通うので、まとまった仕事の手助けはあまりできなかったが、それでも家におりさえすれば、塾堂建設に役だつような仕事を何かと自分でさがしだして、それに精魂せいこんをぶちこんだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そう言ってしまうと、もう、精魂せいこんもつき果ててしまったように、彼女は、目をつぶった——涙が、見栄もなく、目尻から流れて、雪之丞の手先をやっと握っていた指が、異様に痙攣けいれんしはじめた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
精魂せいこんを打ち込まれたのかとぞんじますとのことである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)