粗漏そろう)” の例文
他家に嫁して舅姑の跡を継ぐ者あり、生れたる家に居据いすわりて父母の跡を継ぐ者あり、其辺に心付かざりしは全く記者の粗漏そろうならん。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は死の断定が如何に困難なものであるかを、様々の実例を挙げて説明し、彼の死亡診断が決して粗漏そろうでなかったことを弁明しました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうして、軍医の診断の粗漏そろうによるものと信じました。で、私は、もう一度、士官学校の入学試験を受けることに致しました。
体格検査 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「知れきったこと、この辺りまで、敵をやすやす歩かせる程、御守備は粗漏そろうでもありますまい。また、敵の隠密などなら、かくは木戸を叩きなど致しませぬ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余の考の中に入るべき歌にて、人を感動せしめたる例を尋ぬるも、ちよつと思ひあたらざりける故、例少しと言ひ放したる者にて、余り粗漏そろうなる書きざまにぞありし。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかし、粗漏そろうなる文明史の記者は、こんなことを少しも年表に加えていないようです。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昔の人は観察が粗漏そろうであったゆえ、このはちがかく蜘蛛くもなどを捕えて巣の中へ運び入れておくのを見て、これは蜂が蜘蛛を養うて自分の子とし、我に似よと命じて巣の中に入れておくと
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
とは云うものの、あとになって考えた所によっても、彼女のその咄嗟とっさの場合の考えには、少しの粗漏そろうもあった訳ではなかった。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
儒者にかぎらず、洋学者流も、この辺の事情については、はなはだ粗漏そろう迂闊うかつの罪をまぬかれ難し。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
文部省の審査官を責むるものもあり、その責めやうにもいくらか程度の寛厳かんげんがあるやうであるが、余の考へにては世間一般の人が責める所の方面、即ち著者の粗漏そろうとか、審査の粗漏とかいふ事でなく
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その内一つは、偶然私に恵まれた所のPL商会の受取切符であるから、これを除くとしても少くも二つの点に於て、粗漏そろうがあったことは確かである。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
頭が疲れていたせいか、大丈夫だとは思いながら、ふと飛んでもない粗漏そろうがある様な気がして、心配でたまらなかったのです。しかしそれは私の取越し苦労に過ぎないことが分りました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)