ばし)” の例文
水々しいうおは、真綿、羽二重のまないたに寝て、術者はまなばしを持たない料理人である。きぬとおして、肉を揉み、筋をなやすのであるから恍惚うっとりと身うちが溶ける。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次はさう言つて、火鉢の中に火ばしを突つ込んで、無作法に掘り返しました。よくならされた灰は無慚むざんにも掻き荒され、中からピンと飛び上がつたもの。
膳に向っても、水にでも浸っていたように頭がぼーッとしていて、持ちつけぬ竹の塗りばしさえ心持が悪かった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勿体もったいない、一度先生が目を通して、綺麗にってあるのを、重箱のまま、売婦ばいたとせせりばしなんぞしやあがって、弁松にゃ叶わないとか、何とか、薄生意気な事を言ったろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
屑屋くずやにな大形おおがた鉄砲笊てっぽうざるに、あまつさへ竹のひろひばしをスクと立てたまゝなのであつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)