いらへ)” の例文
清子は何のいらへはなくて、熱き涙を夫の膝に、月も雲間を漏れ出でて、二人が中のいつまでも、かかれかしとぞ輝きぬ。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
打付うちつけに過ぎしことばを二人ともに快からず思へば、とみいらへは無くて、その場のしらけたるを、さこそとはんやうに直行のひとり笑ふなりき。如何いかに答ふべきか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はじめ四五人が先家主の方へ至り雨戸をたゝきて呼物からいらへはなきゆゑ戸へ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
車の音みぬ、れど何のいらへもなし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)