等閑とうかん)” の例文
しかしこれを不瞭解なりと言いて等閑とうかんに付すは、日進の知識は決して得べからざるものと思われ申し候。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「大詩人と云ふことは何でもない。我々は唯純粋な詩人を目標にしなければならぬ」と云ふ「狭い門」(ジツド)の主人公の言葉も決して等閑とうかんに附することは出来ない。
その大を見て驚くなかれ、その小を見て等閑とうかんに附するなかれ。大小の物、みな偶然に非ざるなり。
物理学の要用 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
無論今度のことは等閑とうかんすべからざることですが、退校は少しくこくにすぎはしますまいか
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
目的以外の現象にも注意してそれを等閑とうかんに附せないような習慣をつけたいものである。
物理学実験の教授について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「敵の司馬懿しばいといい、副将張郃ちょうこうといい、決して等閑とうかんやからではない。心して誤るなよ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まぐろつうから存外ぞんがい等閑とうかんに付されているものは、大根おろしである。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
それだけに不安も感じれば、反対にまたれっこのように等閑とうかんにする気味もないではなかった。
子供の病気:一游亭に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
内国貿易の景況、隣国交際の政略、当局の政治家においては実に大切にして等閑とうかんすべからざるものなれども、これがために所期百年の教育上に影響を及ぼすとは憐むべき次第ならずや。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
然れども軽忽けいこつに発狂したる罪はを鳴らして責めざるべからず。否、忍野氏の罪のみならんや。発狂禁止令を等閑とうかんに附せる歴代れきだい政府の失政をも天にかわって責めざるべからず。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
要不要の論はしばらくさしおき、我が日本国人が外国交際を重んじてこれを等閑とうかんに附せず、我が力のあらん限りを尽して、以て自国の体面を張らんとするの精神は誠に明白にして、その愛国の衷情ちゅうじょう
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)