やしき)” の例文
正保二年十二月二日に歿ぼっした細川三斎ほそかわさんさいが三斎老として挙げてあって、またそのやしきを諸邸宅のオリアンタションのために引合ひきあいに出してある事である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大きな母屋に、土蔵が三棟も続き、その間にもみと椿と寒竹を植え込みにした庭を前に控えたやしきを私の室にあてがってくれた。まことに居心地のいい部屋である。
縁談 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
己のやしきと親長のやしきとに、十余日淹留えんりゅう、正月年頭の儀を了えて鞍馬に帰ったとある。
その翌日、漁師の張公という男が、蘇隄で一疋のすっぽんを獲ったがさしわたし二尺あまりもあった。漁師はそれを秋壑のやしきに持って往って売った。秋壑の失敗はそれから三年にならないうちにった。
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ところが校長先生は、つい四、五日前単身奥利根の方から転任してきたばかりだと言って、小ざっぱりした百姓家のやしきに下宿していたのである。百姓家のお婆さんが第の方へ案内してくれた。
酒徒漂泊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
紀尾井町のやしきの地を賜はる。
能久親王年譜 (新字旧仮名) / 森鴎外森林太郎(著)