竿立さおだ)” の例文
伊那丸いなまるの馬は、ひづめって横飛びにぶったおれた。咲耶子さくやこは、竿立さおだちとなったこまのたてがみにしがみついて、ほのおのまえに悶絶もんぜつした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こっちでは五疋がみんなことりことりとおたがいにうなずき合ってりました。そのとき俄かに進んで行った鹿が竿立さおだちになっておどりあがって遁げてきました。
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
山木が車赤坂氷川町ひかわちょうなる片岡中将の門を入れる時、あたかも英姿颯爽さっそうたる一将軍の栗毛くりげの馬にまたがりつつで来たれるが、車の駆け込みしおとにふと驚きて、馬は竿立さおだちになるを
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
自分の駒ばかりでなく、待機している槍組のうしろにいる騎馬の者のそれがすべて竿立さおだちとなって荒れるので、さなきだに陣形は動揺する。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門前町の辻まで、向う見ずに飛ばして来た一騎の悍馬かんばは、四つ辻の角を固めていたさむらいの長槍で、いきなり脚を払われて、竿立さおだちになって暴れまわった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、ふいに村越三十郎の馬が竿立さおだちになった。とたんに三十郎の抜いた白刃が鞍下くらさがりに左の脇を払っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼武蔵の乗っていた日頃の愛馬——百段ひゃくだん——と名のある駒は、かなしげに、竿立さおだちになっていなないた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康は竿立さおだちになった馬の背から、太刀をうしろへ振って、馬の尻ッ尾を切り離した。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬は、いなないて、竿立さおだちになり、勝入は、落馬しかけた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)