竣成しゅんせい)” の例文
そのすぐ前にそれら東洋の建築と何らの関わりもあらぬ厖大な洋風の建築、即ち来るべき総督府の建物がその竣成しゅんせいを今や急いでいる。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それがようやく竣成しゅんせいしていよいよ製造を始めようとするとたんに経済界の大変動が突発してそのまま廃墟はいきょになってしまった事などを知った。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
権兵衛は悩まされた釜礁かまばえれて、工事が思いの外にはかどり、間もなく竣成しゅんせいしたので、高知の藩庁に報告する必要から、急いで引きあげて往くところであった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
取り万事はなはだものうく去年彩牋堂竣成しゅんせい祝宴の折御話有之候薗八節そのはちぶし新曲の文章も今以てそのまゝ筆つくることあたはず折角の御厚意無にいたし候不才の罪御詫おわび致方いたしかた無御座ござなく候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
竣成しゅんせいしたら確に日本一の名城になるところでした」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それと同じように御厩河岸おうまやがしわたよろいわたしを始めとして市中諸所の渡場は、明治の初年架橋工事の竣成しゅんせいと共にいずれも跡を絶ち今はただ浮世絵によって当時の光景をうかがうばかりである。
かくして建物が竣成しゅんせいし、品物が整理せられ、陳列を終って開館の運びに至ったのは、昭和十一年十月二十四日のことであった。本館は階下六室、二階五室、これに西館の三室を加えしめて十四室から成る。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
わたしはこの劇場のなおいまだ竣成しゅんせいせられなかった時、恐らくは当時『三田文学』を編輯へんしゅうしていた故であろう。文壇の諸先輩と共に帝国ホテルに開かれた劇場の晩餐会に招飲せられたことがあった。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
云々。『梅痴詠物詩』の板刻が竣成しゅんせいしたのは翌年の三月頃である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)