立錐りつすゐ)” の例文
異國人ことくにびとにて此祭見しことなきものは、かゝる折の雜遝ざつたふを想ひ遣ること能はざるべし。立錐りつすゐの地なき人ごみに、燃やす燭の數限なければ、空氣は濃く熱くのみなりまさりぬ。
立錐りつすゐの地なしと門前の警官が、絶叫したるもうべなりけり、しもに広き青年会館の演説場も、だ人を以て埋めたるばかり、爛々らん/\たる電燈も呼吸の為めに曇りて見えぬ、一見
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
下は大床より上は天井に至るまで、立錐りつすゐの地をあまさゞるこの大密畫は、即ち是れ一くわの寶玉にして、堂内の諸畫は悉くこれをうづめんがために設けし文飾あるわくたるに過ぎず。
之を制止する声かへつて難船者の救助を求むる叫喚の如くぞ響く「最早もう立錐りつすゐの地が無いのだ」「コラ、垣を越えては不可いかん」「すな/\」「提灯ちやうちんぶれるワ」「痛い/\」「ヤア/\」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)