窓框まどがまち)” の例文
くやしいことと云いながら、津留はつと手を伸ばし、ひさしに吊ってある青銅の古雅な風鈴をはずして、そのまま窓框まどがまちに腰をかけた。
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
むろんその意味はわからないけれど、白い人影は窓框まどがまちによりかかり、青年は背伸びをして、何かヒソヒソと話し合っていた。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見るに忍びないものが、窓框まどがまちせかけた片肘にあごを乗せて視力のうすれた眼でぼんやり外の風景にみとれている彼の横顔の中に深い翳を刻んでいる。
菎蒻 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
石田氏は窓框まどがまちに両手をつき、這いつくばうような恰好で、火の燃えているほうを見あげ
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「また、妖精山ハルツ風景かい。だがいったい、そんなことを本気で云うのかね」検事はたばこの端をグイと噛んで、非難の矢を放った。法水は指先を神経的に動かして、窓框まどがまちを叩きながら
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから、部屋の窓を半ば開けて、犯人がそこから逃げ去った体裁を作り、ついで竹やの医者から帰ったのを見計らい、廊下へ走り出して、身軽に窓框まどがまちへ乗り、電燈引込線のスイッチを切った。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
窓框まどがまちの壊れたところを直すはずだった、たしかそのためにくぎを買ってきた日だった——あの極道野郎めが、あの……
蛮人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
柱も敷板も窓框まどがまちも、みなつやつやと鼈甲色べっこういろに拭きこんであり、きちんと置かれた道具類も高価な品ではないが、たいせつにされてきた年月のあかしのように
日本婦道記:萱笠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女中が茶を替えに来たとき、おしのは窓框まどがまちひじを掛け、その上に顔を伏せたまま、眠ったような恰好をしていた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)