禍害わざわい)” の例文
禍害わざわいなるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは酒杯さかずきと皿との外を潔くす、然れども内は貪慾どんよくと放縦とにて満つるなり。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
に人の子は己につきてしるされたるごとく逝くなり。されども人の子を売る者は禍害わざわいなるかな、その人は生まれざりし方よかりしものを!(一四の二〇、二一)
十分前まではしきり救助すくいを呼んでいた市郎が、にわかに黙ってしまったのは不可思議である。これももしや何等かの禍害わざわいこうむったのではあるまいかと、巡査は胸を騒がした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
禍害わざわいなるかな、偽善なる学者、汝らは預言者の墓をたて、義人の碑を飾りて言う、「我らもし先祖の時にありしならば、預言者の血を流すことにくみせざりしものを」
如是我聞 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ただ漫然と打捨うっちゃって置くから、往々にして種々いろいろ禍害わざわいかもすのだ。勿論もちろん打捨うっちゃって置いても、自然にほろびつつあるには相違ないが、それにはすくなからぬ年月を要するだろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
畑に働いている者は上衣を取りに帰るな。皆その場から、着のみ着のまま大急ぎで避難しろ。その日にはみごもりたる女と、乳をまする女とは禍害わざわいなるかな。このことの冬起こらぬように祈れ。