禅機ぜんき)” の例文
旧字:禪機
呑気のんきなる迷亭君と、禅機ぜんきある独仙君とは、どう云う了見か、今日に限って戸棚から古碁盤を引きずり出して、この暑苦しいいたずらを始めたのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一、馬券は尚禅機ぜんきの如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。
我が馬券哲学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
忍剣は身の危険きけんを知るよしもなかった。おそらくかれは、故快川和尚こかいせんおしょう最期さいごのことば——心頭しんとう滅却めっきゃくすれば火もまたすずし——の禅機ぜんきをあじわって、二十一日のけいをけっして長いとも思っておるまい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふるって驀地ばくちに進めとえたのみである。このむさくろしき兵士らは仏光国師の熱喝ねっかつきっした訳でもなかろうが驀地に進むと云う禅機ぜんきにおいて時宗と古今ここんそのいつにしている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)