示指ひとさしゆび)” の例文
夫人は示指ひとさしゆびてゝ、みつゝ我顏を打守り、油斷のならぬ事かな、さるいちはやき風流みやびをし給ふにこそ、否々、面をあかめ給ふことかは、君のよはひにては
「気張るぞ」と今一人の船頭が言って、左のひじをつと伸べて、一度拳を開いて見せ、ついで示指ひとさしゆびてて見せた。この男は佐渡の二郎で六貫文につけたのである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この物語のうち始終示指ひとさしゆびにて話の調子をとり、せつなき思入にていふ。弥左衛門が孫と知らぬが残念なりと向ひを指し嘆くにつれ、権太も一所に向ひを指して嘆く。
セルギウスは「只今」と声高く答へて、左の手の示指ひとさしゆびを薪割台の上に置いて、右の手に斧のを握つて、斧を高く振り上げて、示指の中のふしを狙つて打ち下した。
忽然兄きは頭をつて、死人のやうな顔色になりました。そして右の手の示指ひとさしゆびてゝわたくしに見せるのです。それが『気を付けろ』といふのだらうとわたくしには思はれたのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
ふなばたに倚り手を伸べて右の示指ひとさしゆびに綸を懸け、緩く進退しながら
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
といふ末の句を間を延ばしていひ「しやくり上げても出ぬ涙」にて如何いかに泣いて見ても涙の出ぬに呆れ、右の示指ひとさしゆびにて自分の顔を指し、また右の平手にて右のほおをうち
右の拇指おやゆび示指ひとさしゆびとにて丸い輪を拵へ「お金が欲しうございます」といふ。