硯石すずりいし)” の例文
硯石すずりいしの崖のてっぺんで見つけたから、仕事を休んでとっつかまえましたが、いやはや、これがために一日つぶしてしまった上、命拾いでござんした。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから入代いりかわり立代り来る頭山翁の訪客を、奈良原翁はジロリジロリと見迎え、見送っていたが、やがて床の間に置いてある大きな硯石すずりいしに注目し、訪客の切れ目に初めて口を開いた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長崎渡りの七宝焼しっぽうやき水入みずいれ焼付やきつけの絵模様に遠洋未知の国の不思議を思わせ、赤銅色絵しゃくどういろえ文鎮ぶんちん象嵌細工ぞうがんざいく繊巧せんこうを誇れば、かたわらなる茄子形なすびがた硯石すずりいし紫檀したんふたおもてに刻んだ主人が自作の狂歌
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
硯石すずりいしとして日本一といわれる「雨畑あまばた」も甲斐の産であります。名は地名にもとづきます。石の色は黒で、発墨の工合がよいといわれます。これに優れた形を与えるのが工人たちの務めであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
石巻ノ衰ヘタ原因ハ如何いかニモ明白デアル、水ニさけまぐろガアル、陸ニ石、糸ガアル、長十郎梨ガアル、雄勝ノ硯石すずりいしモアル、渡ノ波ノ塩ハ昔カラ名高イ物デアル、アタリノ禿山はげやまニ木ヲ植ヱ
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)