石仏せきぶつ)” の例文
石仏せきぶつに愛なし、色は出来ぬものと始から覚悟をきめているからである。愛は愛せらるる資格ありとの自信にもとづいて起る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて、近づく道誉の姿を見つけると、具行は、青芒あおすすきそよぎの中で、ただ一つのそよがない趺坐ふざ石仏せきぶつのごとく、硬直して、きっと相手をにらまえていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまゝ樹下きのもとに立せ玉ふ石地蔵𦬇いしのぢぞうぼさつまへならびたちながら、懐中くわいちゆうよりかゞみいだして鉛粉おしろいのところはげたるをつくろひ、唇紅くちべになどさしてよそほひをなす、これらの粧具しやうぐをかりに石仏せきぶつかしらく。
そのまゝ樹下きのもとに立せ玉ふ石地蔵𦬇いしのぢぞうぼさつまへならびたちながら、懐中くわいちゆうよりかゞみいだして鉛粉おしろいのところはげたるをつくろひ、唇紅くちべになどさしてよそほひをなす、これらの粧具しやうぐをかりに石仏せきぶつかしらく。