ねぶ)” の例文
眼をねぶつた様な積りで生活といふものゝ中へ深入りして行く気持は、時として恰度ちやうどかゆ腫物しゆもつを自分でメスを執つて切開する様な快感を伴ふ事もあつた。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかるに某は身動みじろぎだにせであるを、衆のものいよいよ可笑がりて、近づき視れば、何ぞ図らむ、舌を吐き目をねぶりて、呼息まことに絶えたり。高粱の殻にて縊れぬとはあやしからずや。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そうこうするについ三十年うっかりと過ごして、そのつれなき夫通武が目をねぶって棺のなかに仰向けにし姿を見し時は、ほっと息はつきながら、さて偽りならぬ涙もほろほろとこぼれぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そのねぶつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眼をねぶったようなつもりで生活というものの中へ深入りしていく気持は、時としてちょうどかゆ腫物はれものを自分でメスをって切開するような快感を伴うこともあった。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
幸なるかな、書生君は柔術の達人なれば、片手にのどをしめ、片手にカラアをひいて、頸はやう/\カラアに入りぬ。此間小生は唯運を天に任し、観念のまなこねぶつて、ほふられむとする羊の如くたたずみたり。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)