着込きこ)” の例文
せなかに大きな桔梗ききょうもんのついた夜具やぐをのっしりと着込きこんで鼠色ねずみいろふくろのようなはかまをどふっとはいておりました。そして大きな青いしま財布さいふを出して
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
乱箱みだればこたたんであった着物を無造作に引摺出ひきずりだして、上着だけ引剥ひっぱいで着込きこんだ証拠しょうこに、襦袢じゅばんも羽織もとこすべって、坐蒲団すわりぶとんわきまで散々ちりぢりのしだらなさ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから戸棚とだなからくさりかたびらを出して、頭から顔から足のさきまでちゃんと着込きこんでしまいました。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見るとそれは先ごろのばん倉庫そうこ屋根やねでした。倉庫の屋根は、赤いうわぐすりをかけたかわらを、まるでよろいのようにキラキラ着込きこんで、じろっとあたりを見まわしているのでした。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)