真情まごころ)” の例文
旧字:眞情
それも自分ゆえであると、善吉の真情まごころが恐ろしいほど身にむ傍から、平田が恋しくて恋しくてたまらなくなッて来る。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
女性のもつ真情まごころと、細かな気くばりをもって、身のまわりの事や、心の慰めになろうと努めてはいるが、眉の針は、朝も消えていない。夜も消えていない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嬢様も此人の真摯まじめな偽りのない真情まごころには余程動かされて同情の涙をおそゝぎなすつたらしいが、実に御道理ごもつともだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
もう三、四年も前にちょっと耳にせぬでもなかったが、たといいかなる深い男があっても、自分のこの真情まごころまさる真情を女にささげている者は一人もありはせぬ。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
としみじみと云うその真情まごころさそい込まれて、源三もホロリとはなりながらなお
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
げに真情まごころ浅き少女おとめの当座の曲にその魂を浮かべし若者ほど哀れなるはあらじ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
どうか治癒なおして下さりませと。涙流して溜息ついて。頼み入るのが少くないが。そんな骨肉みうちの連中の中でも。ホンニしんから真情まごころめて。治療なおすつもりで介抱するのは。実のところが母親ばっかり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは菊枝の真情まごころであった。彼女は、同級の誰彼が、みんないろいろの方面へ進んで行って、自分一人が野良に残されたことを悲しく思いはしたが、決して父親の苦しい生活を忘れてはいなかった。
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
自分は猜疑さいぎもしなければ、嫉妬もせず、ただ一と筋に真情まごころを傾けて女の意のままに尽してやってさえいれば、いつかはこちらの真情が向うに徹しなければならぬ。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
夫人はうれしかった。女性おんな真情まごころと、妻のたましいを、緑にいて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思ってみても昔の物語や浄瑠璃などにある人間ならばともかくも今の世におよそ私くらい真情まごころを傾け尽して女を思いつめた男があるであろうか……なるほどその三野村という男のことは
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
真情まごころの色は眼に見えても、茶の香はしないらしい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)