看取かんしゅ)” の例文
どっちの場合も、人様ひとさまのおかげをもって、どえらい傍杖的そばづえてき被害をくらおそれが十分に看取かんしゅされたものだから、どうして落付いていられようか。
敵のいしびやと我の弓矢とは、その威力に於ていちじるしい相違があった。朝高は早くもこれ看取かんしゅして、我も彼と等しき巨砲を作ろうと思い立ったのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いずれも目立たぬ扮装いでたちをして、いずれも編笠を真深にかぶって、そうして袴を裾短かにはいて、意気込んでいるということだけは十分に看取かんしゅすることができた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それがだれであったかは、当時もいまもよくわかっていないが、アバス・ヌリ殿下の行動に危険を看取かんしゅしてにわかに呼び返したのは、この「第二号」だったと言われている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
唯三人の将校の顔面筋肉が段々と引きしまって来て、其の顔色は同じように蒼白化そうはくかし、其の下唇は微かに打ちふるえて来るのを看取かんしゅすることが出来ました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
車扉ドアが開けられて、降りるようにという声がする。降りた、そこを五、六人の男が包囲してしまう。表面は慇懃いんぎんな態度だが、それは冷い敵意の変形でしかないことを、マタ・アリは素早く看取かんしゅした。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
恐らく此の女は、男湯の騒ぎの最中さなかに殺されたものであろう。そう想う人々の面に、何がなし深い恐怖と不安がただよい初めたのを、赤羽主任も一通り看取かんしゅする余裕を持っていた。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)