眇目すがめ)” の例文
そのとき娘はまるでこれまでに見たことのないような凄い、眇目すがめのような微笑をもらして、うまそうにその赤蛙を呑み込んでしまったのです。
不思議な国の話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その外に遠い親戚だという眇目すがめな男がゐた。警察の小使をした事があるとかで、夜分などは『現行警察法』といふ古い本を繙いてゐる事があつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
人の顏を見る時には、まぶしさうに細い眇目すがめをして見るのであるが、ぢつと注意して觀ると、すでに眼の黒玉はどつちかに片よつてゐるのであつた。
(旧字旧仮名) / 島木健作(著)
巫山戯ふざけるなよ、馬鹿野郎。菊石あばた眇目すがめだった日にゃ、貞女だって石塔だって、担ぐ気になる手前てめえじゃあるめえ」
世間のあだ名にされているまぶたの皮のヒッつれた眇目すがめをふせて、じっと、自分のひざのこぶしを見ている父……。
武芸にすぐれ、度胸満点の忠盛も、舞の方は余り得手えてではない。それにこの人は生れつきの眇目すがめである。眇目の踊りは、どうひいき目にみても、余り優美ではなかったろう。
にらむとこの子はやや眇目すがめになるのだ。弟の方の顔はしだいにくずれて、今にも泣き出しそうな顔になった。しかし泣き出しはしなかった。眼をキラキラさせて、くちびるを噛みしめている。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
次の機会に眇目すがめになりかけのノーソフが少し喋る。ポツリ、ポツリ、職長、党員のペトロフが目立たない言葉を挾んだ。——みんなが上手く喋るどころか! ノーソフの奴、勢こんで
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
子供の時分に姉の家に庫次という眇目すがめの年取った下男げなんが居た。
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人の顔を見る時には、まぶしそうに細い眇目すがめをして見るのであるが、じっと注意してると、すでに眼の黒玉はどっちかに片よっているのであった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
巫山戯ふざけるなよ、馬鹿野郎。菊石あばた眇目すがめだつた日にや、貞女だつて石塔せきたふだつて、擔ぐ氣になる手前てめえぢやあるめえ」
つい保元平治の合戦の前までは、眇目すがめの子の安芸あきどのか——ぐらいに下に見ていられた清盛が、内大臣からまたたくまに、太政大臣——嘘のような事実である。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と言つて、眇目すがめの老爺は面白相に笑つた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
伊勢平氏いせへいし眇目すがめ、伊勢平氏は眇目」
「いや、まったく。生来が眇目すがめたち。御無礼の罪は、どのようにもお詫びいたしますゆえ、一命だけは」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤黒くて強健で、無口で頑固な宇太松は、眇目すがめ横肥よこぶとりがして、この上もない醜男ぶおとこでした。
なぜならば、そのどれを見てもびっこで、眇目すがめである。そして藤の花を冠にさし、青い衣を着ている。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眇目すがめの伊勢どのは、美人を妻にもったため、女房負けしてござるぞと、世間ではいっているわ