相憐あいあわれ)” の例文
「そんなに言うない。おはまさんなんかかわいそうな所があるんだアな、同病相憐あいあわれむというんじゃねいか、ハヽヽヽヽヽ」
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかし同病相憐あいあわれむという、僕自身もはなはだ気弱いことを感知し、これにつき年来ねんらい少しく工夫をらしている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
道也は相手の来意がわからぬから、先方の切り出すのを待つのが当然と考える。高柳君は昔しの関係を残りなく打ちけて、一刻も早く同類相憐あいあわれむの間柄になりたい。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その一人が伯父おじの寿平次だった。長い痔疾じしつの全治した喜びのあまりに、同病相憐あいあわれんで来た伯父たちは夢中になって河岸をかけ回り、互いに祝意を表し合っているというところだった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
栄誉えいよ利害りがいを異にすれば、またしたがって同情相憐あいあわれむのねんたがい厚薄こうはくなきを得ず。たとえば、上等の士族が偶然会話の語次ごじにも、以下の者共には言われぬことなれどもこのこと云々しかじか、ということあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)