相客あいきゃく)” の例文
「今夜は格別のおもてなしに預かって、わたしも満足した。しかしあなたと二人ぎりでは余りに寂しい。誰か相客あいきゃくを呼んで下さらんか」
こんなことを考えながら、七兵衛は、その晩は高尾の坊へとまることになりましたが、そこで四五人づれの奇異なる相客あいきゃくと落合いました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして、まだ十分もしないうちに、列車が品川の駅へとまると、クルミさんのボックスへ、一人の相客あいきゃくが割りこんで来た。
香水紳士 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
葉子は自分の乗った船はいつでも相客あいきゃくもろともに転覆して沈んで底知れぬ泥土でいどの中に深々ともぐり込んで行く事を知った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まるで自分の一存いちぞんで来たような落付きようで、ほかに相客あいきゃくの一人もない静かな廊下を濶歩かっぽして行って湯につかったり、スキーを習ったりしていたが
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
当日は若主人が迎えに来て、丁重な夕食を相客あいきゃくと一しょに馳走になった。膳の上には一皿の小魚の煮附が載っている。
御茶の御馳走ごちそうになる。相客あいきゃくは僧一人、観海寺かんかいじ和尚おしょうで名は大徹だいてつと云うそうだ。ぞく一人、二十四五の若い男である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「——何か用か、野良犬たち、外へ行こう。ここは旅籠はたご相客あいきゃくにも友だちにも迷惑。外へ来い」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相客あいきゃくは砂の中に、その長いくびをグッと曲げて、帆村の方を眺めた。彼はすべてを呑みこんでいるという風にニヤニヤと笑っているのだった。長い顔、そして大きな唇。その顔!
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あひさし」は二人でさすの意、相合傘あいあいがさのことであろう。こういう言葉があるかどうか、『大言海』などにも挙げてはないが、相住あいずみ相客あいきゃく等の用例から考えて、当然そう解釈出来る。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その日の正客しょうきゃくは島田先生で、お相客あいきゃくも五六人ほどございました、女中たちはなかなかいそがしそうだから、わたしのことゆえ、台所の方までも出向いて
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「旦那、島めぐりの相客あいきゃくがあるがのう、まだ二人ほど足らんのじゃ、乗ってくださらぬか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)