白眉はくび)” の例文
せんだって或る文学者のいる席でハリソンの歴史小説セオファーノのはなしが出たから僕はあれは歴史小説のうち白眉はくびである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世界大戦を背景に活躍した、あの有名な踊子のスパイ Mata Hari は、大戦にともなう挿話中の白眉はくびである。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
レコードではビクターのトスカニーニがN・B・C交響管弦団を指揮したのが白眉はくびであろう(JD一七二〇—二)。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
歌麿一家の制作に対するその詩人的感情の繊細と文辞の絶妙なるに至つては永く浮世絵研究書中の白眉はくびたるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また『水甕みずがめ』の昭和十年この方数十回にわたり、松原三夫まつばらみつお氏の正徹伝が載っていて、伝記研究の白眉はくびである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
うまやをのぞき込んでいる。厩は二棟あった。栗毛、白眉はくび、月毛、いい馬がたくさんいてどれもよく肥えている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二、里見さとみ君の「蚊遣かやり」もまた十月小説中の白眉はくびなり。唯いささ末段まつだんに至つて落筆匇匇そうそううらみあらん。他は人情的か何か知らねど、不相変あひかはらず巧手かうしゆの名にそむかずと言ふべし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これもビクターのコルトーの演奏をもって白眉はくびとし(JD八四〇—一)、ほかにビクターのモイセイヴィッチ、同じくナイ、コロムビアのナットなどがある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「では機会のあり次第、ぜひ一度は見ておおきなさい。夏山図かざんず浮嵐図ふらんずに比べると、また一段と出色しゅっしょくの作です。おそらくは大癡たいち老人の諸本の中でも、白眉はくびではないかと思いますよ」
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白眉はくびの僧が、応答している間に、彼方の蔵王堂ざおうどうの方で
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このうち最近ワルターがパリの管弦団を指揮したレコードが、ビクターから現れて、間もなく発売を中止されたが(VD八一四六—五一)、おそらくこの曲のレコード中の白眉はくびだろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
馬氏の五常、白眉はくびを良しと、世間に評があった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)