白狐びゃっこ)” の例文
そしてそれが兄の筆から出た英文の著作の中では、未単行の『白狐びゃっこ』を除いては、いちばん永久性に富んだ心にくい作品である。
茶の本:01 はしがき (新字新仮名) / 岡倉由三郎(著)
彼女のくびにした白狐びゃっこの毛皮の毛から、感じの柔軟な暖かさが彼のほおにも触れた。この毛皮を首にしていれば、絶対に風邪かぜはひきッこない。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
狐三百歳にして黒狐こっことなり、五百歳にして白狐びゃっことなるという、その黒狐であることを聞き、なお退治の方法を教わり、薬王樹の一枝をも貰い受けた。
文学以前 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あれや、建部の巫子みこにちがいないわ。巫子というものは、どこの巫子も色が白い。日蔭の花か、白狐びゃっこみたいだ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第四種(鳥獣編)妖鳥、怪獣、魚虫、火鳥、雷獣、老狐ろうこ九尾狐きゅうびのきつね白狐びゃっこ古狸ふるだぬき腹鼓はらつづみ妖獺ようだつ猫又ねこまた天狗てんぐ
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「貴様たちに正体を見とどけられるような俺だと思うか。おれはここらに年白狐びゃっこだぞ」
平右衛門はひらりと縁側から飛び下りて、はだしで門前の白狐びゃっこに向って進みます。
とっこべとら子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
物語をしながら上下左右自由自在に絵を描いて行く、白狐びゃっこなどは白い粉で尾のあたりからかいて、赤い舌などもちょっと見せ、しまいに黒い粉で眼を点ずる、不動明王の背負う火焔かえんなどは
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
色とりどりな秋の小径こみちを森の古巣ふるすへ走って行く一ぴき白狐びゃっこの後影を認め、その跡をしとうて追いかける童子どうじの身の上を自分に引きくらべて、ひとしお母恋いしさの思いに責められたのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)