白楊はくよう)” の例文
あおい海に沿った、遠くに緑の半島がかすみ、近くには赤い屋根のバンガロオが、処々ところどころに、点在する白楊はくよう並木路なみきみちを、曲りまわって行きました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
二階の窓からは、淡い火影がさして、白楊はくようの枝から枝にかけてあった洗たく物も、もうすっかり取りこまれていた。
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
反照電熱機のような、香橙色オレンジまるな夕陽を、地中海が受け取って飲み込んだ。同時に、いろいろの鳥が一せいに鳴き出して、白楊はくようの林が急に寒くなった。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
きのふの御作中柳橋やなぎばしの芸者が新橋しんばしといふ敵国を見る処おもしろく拝見仕候また先日のモリス・バレスが故郷の白楊はくようの並木をおもふ一節感服仕候当地の平田禿木ひらたとくぼく氏はボオ・ブラムメルの処を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
背後は丘を切り崩した赤土のがけだった。窓の前は白楊はくようや桜やかえでなどの植込みになっていた。乱雑に、しかも無闇むやみと植え込んだその落葉樹が、晩春から初秋にかけては真っ暗に茂るのだった。
錯覚の拷問室 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
翠屏山すいへいざんは、薊州東門のそと、郊外二十里のところ。全山は墓地であり、たけなす草、かば白楊はくようの茂み、道は磊々らいらいの石コロで、途中には寺も庵もなく、ただ山上に荒れ朽ちた岳廟がくびょうがあると聞くばかり……。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
谷の白楊はくようが遠く風になびいてゐます。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
白楊はくよう テオドル・オオバネル
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
塑像のように動かない街角の支那巡査、ぬかるみのまま固化した裏通り、zig zag につづく木柵、剃刀みたいにひやりと頬に接吻して行く松花江しょうかこうの風、そよぐ白楊はくようと巻きあがる馬糞の粉と
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
白楊はくようそびやぐ並木
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)