発疹はっしん)” の例文
……発疹はっしんチフスというやつでね。……百姓家は、軒なみに、病人がごろごろしているんだ。……いやその不潔なこと、臭いこと、煙たいこと。
また発疹はっしんや病的な赤い斑点はんてんなども見えていた。二、三人の者は、車の横木になわを結わえてそれをあぶみみたいに下にたらし、その上に足を休めていた。
呑みつけぬ酒の為に、顔がかっかとほてって、肌寒い気候なのに、額にはビッショリ汗の玉が発疹はっしんした。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先ごろ浅草の本願寺だかで浮浪者の救護に挺身ていしんし、浮浪者の敬慕を一身にあつめて救護所の所長におされていた学生が発疹はっしんチフスのために殉職したという話をきいた。
特攻隊に捧ぐ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ことに猪のような毒質の多い肉を悪疫質あくえきしつの人や発疹はっしんのある人が食べたら大変な害を受けます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
事実、師直は、天龍寺落慶らっけいの翌年の夏、二ヵ月ほど寝こんで出仕しゅっしも欠いた。病名は“蚊触かぶれ”だとある。蚊触とはつまり発疹はっしんのことらしい。「園太暦えんたいりゃく」では瘡疾そうしつかかったのだと書いている。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病みだした初めのうちもてっきり疱瘡だろうと思ったのであるが、五日めになって医者が発疹はっしんのもようをみたうえたぶん麻疹だろうと云い、そのとおりの経過をとりだしたのでいちおう安心した。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
考えて見るのに、彼女は、醜くなった肌を見せる恥かしさばかりでなく、それが性質のよくない発疹はっしんであったら、藩主の家の外聞に関わるとでも考えていたらしいのだ。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すっかり発疹はっしんしてしまうまでは風に当てないように。