しびれ)” の例文
お百姓さんはきちんとかしこまって坐っていたのでしびれをきらしたらしく、一寸足を崩して私を見て笑った。とても邪気のない笑いだった。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
今日こんにちでは内務の一等属、何とかの係長たることを得たのだという話を長々と聴かされて、私はしびれが切れて、こたえ切れなくなって、泣出しそうだった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「十万堂の遊女人形は、あれは女房の代りじゃなかったんですか。」故人がかかりつけの医者で、謡曲好きのGは、しびれが切れたらしい足を胡坐に組みかえた。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
「もう来る頃としびれをきらしていた、よく来たな、そのほうに会いたいと申す者がおる、まあ下にいろ」
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お前と同じようにしびれを切らした末が、海軍の方に身請されたが、今じゃアお前、横須賀で所帯をもち、奥様といわれ立派になってるよ、まア物ごとはすべ左様そういうものでね
翼が生えたやうに宙にフワ/\して、何か知ら金色こんじきの光がキラ/\と眼の先にきらめく。と、其が鋭利な物になツて眼の中に突ツ込むで來る。其處で幻が覺めかゝツて、強く腕のしびれを感じた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「親分が、あの伜と掛け合つてゐるうち、あつしは二、三人達者な奴と逢つて來ましたよ。何しろあの青瓢箪あをべうたん野郎と來た日にや、煮え切らなくて、欝陶うつたうしくて、話をしてゐると、しびれがきれるでせう」
三田は始めから坐り通しで、しびれの切れた足を起した。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
おじさんのおなかのなかの勝負の虫は、もはや活溌に動きはじめて、おじさんは先刻からしびれをきらしていたのに違いなかった。
おじさんの話 (新字新仮名) / 小山清(著)