疝痛せんつう)” の例文
爺さんは疝痛せんつう持ちだし、婆さんは喘息ぜんそくで、今夜は冷えるとか、湿気が強いとか風邪けだとか云って、依頼者があってもなかなか動かないのである。
ゆうれい貸屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あつしの疝痛せんつうと、女房の腹痛を直して貰ひましたよ。それからは御恩返しにいろ/\働いて居るだけの事で、へエー」
ペピイスの『日記ダイヤリー』一六六四年正月の条に兎の足を膝関節込みに切り取って佩ぶれば疝痛せんつう起らずと聞き、笑い半分試して見ると果して効いたとある。
ところが段々読んで行くうちに、亜砒酸は激烈なる疝痛せんつうを起すものであると知って、少しく心が暗くなって来た。
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
五百は平生へいぜい病むことがすくなかった。抽斎歿後に一たび眼病にかかり、時々じじ疝痛せんつううれえた位のものである。特に明治九年還暦ののちは、ほとんど無病の人となっていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お上は、国家の食糧事情の大所高所から観てよいあんばいにやっているのであろうから、私如き俄百姓が、疝痛せんつうを起こすなど、甚だ僣上至極。慎まざるべけんや。
食べもの (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
しかも、つけたわ、つけたわ、疝痛せんつうの薬だけに、世の中の疝痛が残らず止まるほどだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
うってくわえて妻は喘息、それがしは疝痛せんつう
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「あっしの疝痛せんつうと、女房の腰痛を治して貰いましたよ。それからは御恩返しにいろいろ働いているだけの事で、ヘエー」
風邪ふうじやあとで持病の疝痛せんつう痔疾ぢしつが起りまして、行歩ぎやうほかなひませぬ。」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)