現場げんば)” の例文
「蟻走は蟻走でも、わたしゃ下蟻走したギソウですけん、「現場げんば」に立ち会うたこた、一ぺんもないです。誰か、本蟻走ほんギソウに訊いて下さい」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
本当は、東道の方が近道だったのだけれど、思いがけない道路事故のため、牛丸は春木清よりも、三十分もおくれて現場げんばにつくことになったのだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現場げんばに落ちていた刀は、二三日前作事の方に勤めていた五瀬某が、詰所つめしょに掛けて置いたのを盗まれた品であった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
屋内おくないはべつに取乱とりみだされず、犯人はんにんなにかを物色ぶっしょくしたという形跡けいせきもないから、盗賊とうぞく所為しょいではないらしく、したがつて殺人さつじん動機どうきは、怨恨えんこん痴情ちじょうなどだろうという推定すいていがついたが、さて現場げんばでは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
うっかり両替屋へ持って行ったら藪蛇やぶへびだ。巾着切りの方は現場げんばを見たわけでもねえから仕様がねえが、例の馬の一件、それが確かにお角の仕業だかどうだか、今のところじゃあ一向に手がかりがねえ。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もう一町ほど行って左へ坂をあがれば、現場げんばへ出られる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やあ、陳程委員さん、私は帆村委員ですがね、こんなところで押し問答をしても仕方がない。現場げんばへいって、常時の模様をよく説明してください」
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
午後、「現場げんば」に持ち寄られ、「蟻走」立ちあいの上、胴親の厳封した当り銭を開いて、勝負を定める。「現場」は、警察の眼をくらますため、毎日、移動される。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
私は大きい衝動しょうどうにたえきれないで、恐ろしい現場げんばを前に、あらゆる知覚ちかくを失ってしまいました。暗い世界に落ちてゆくような気がしたのが最後で、なにもかもわからなくなったのです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)