ウルフ)” の例文
それから三時頃眼をさまして、羽根布団の中で焼き林檎りんごを喰べていると、いつの間に這入って来たのか、ウルフが枕元に突立っていた。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「茨城県磯崎に『ウルフ』の巣を見付け出したのは、何といっても驚嘆きょうたんすべきお手柄だ」草津大尉は、前方を注視しながら、独言ひとりごとのように云った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうですわ。そこへ、紅子べにこさんという、浅草の不良モガが、一人でやって来たのよ。ウルフは、紅子さんと、手を取って、帰って行きましたわよ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妾がこう云って笑った時のウルフの顔ったらなかった。蒼白く並んだ肋骨ろっこつを、鬼火のように波打たして、おびえ切ったウツロからなみだをポトリポトリと落しはじめた。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを合図のように、飛行機は、又漠々ばくばくたるプロペラの響をあげ、呆気あっけにとられている「ウルフ」の一団を尻目に、悠々と空中へ舞い上っていった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
寝台の向う側に妾の爪先とスレスレにかしこまったまま、それこそウルフソックリのアバラ骨を薄い皮膚の下で上げたり下げたりして、一生懸命にせきを押え押えしていた。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)