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狂母
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きょうぼ
あらゆる
醜状を
世間にさらした
生きがいなき
不幸な母と思いつめると、ありし世の
狂母の
惨状やわが
身の
過去の
悲痛やが、いちいち
記憶から
呼び起こされるのである。
今夜はじつにこみいった
感情が、せまい女の
胸ににえくり返ったけれど、ともかくもじっと
堪忍して、
狂母の死を
告げにきてくれた人たちに、それほどに
礼儀を失わなかった。
お政は長いあいだ
苦に思っていた
狂母が、きょう人なみに終わったと聞いて、一どは
胸なでおろして安心したものの、さすがに
忘れがたき母の死を感じては、
心さびしくもあり
悲しくもある。