牢格子ろうごうし)” の例文
下棚の艫の間は牢格子ろうごうしのついた四間四方の船牢になり、表の間と胴の間は船倉で島々へおくる米、味噌、雑貨などを積みこむ。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
六畳に八畳、お勝手も便所も付いたまとまった建物ですが、窓には牢格子ろうごうしのような厳重な格子を打って、内には雨戸を閉めているので、のぞいてみる工夫もありません。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
獄中はもう黒白あやめも分かたぬ黒煙であった。打ち壊した牢格子ろうごうしのあたりもすでに火焔かえんふさがっている。母里太兵衛はさきに用いた角木材でふたたびそこを大きく破壊した。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれがそれと、ふとした事から、牢格子ろうごうしを隔てて、話し合うような仲になる。それから、その話が、だんだんたび重なって、いつか互いに身の上の事まで、打ち明け始める。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ずいと牢格子ろうごうしの中へはいっていくと、さみしく笑っていったことです。
さすがに牢格子ろうごうしははめませんが、出入り口は人見ひとみを付けた厳重なかしの一枚戸で、平常ふだんは大海老錠でとざしてあるらしく、戸の上の欄間らんまの荒い格子から入る明りが、真新しい畳の上に落ちて