片方かたっぽう)” の例文
下宿人の靴へ、しかもその片方かたっぽうへ、おかみさんが水をいっぱいぎこんでおこうとは、どうしても考えられない。が、事実は事実だ。
そして、とうとう一本の棒の片方かたっぽう丈けはずしてしまいましたが、すぐ助八さんに見つかって、一日ご飯がたべられませんでした。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
右の眼はまばたきするが、左の方は決して動かない。魚の眼見たように何時も明いている。乃公も真似をして、片方かたっぽうの目だけで瞬きして見たが、どうも巧く行かない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
片方かたっぽうの都合のいいように途中で設けられた道徳以上に、私どもは人の心が完全に発展して行けば必ず其処に達せねばならぬというものを土台にした道徳にって安住致したい。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
すると、片方かたっぽうも黙ってはいない。覚えておれと言わないばかりに、「この野郎」と叫んだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このお婆さんも不思議な風体ふうていで、頭は白髪が茫々ぼうぼうと乱れているのに、わらで編んだ笠をかむり、身には長い穀物こくもつの袋に穴を明けたのに両手と首を通して着ていて、足には片方かたっぽうにスリッパ
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)