細作かんじゃの名手、放火つけびの上手、笛の名人、寝首掻きの巧者、熊坂長範くまさかちょうはん磨針太郎すりはりたろう壬生みぶの小猿に上越うえこすほどの、大泥棒もおりまするじゃ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「今時にも、熊坂長範くまさかちょうはんみたいなものがいるとみえ、あの大坂城へ、大八車を曳きこんで、お金蔵きんぞうだのお手道具だのを、空巣稼あきすかせぎした奴があるそうじゃ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし世間が熊坂長範くまさかちょうはんばかりになったらいかなる盛徳の君子もやはり吾輩のような態度に出ずるであろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふもとの里に、錣頭巾しころずきを取ってかずき、薙刀なぎなた小脇に掻込かいこんだ、つらにはを塗り、まなこ黄金こがねひげ白銀しろがねの、六尺有余の大彫像、熊坂長範くまさかちょうはんを安置して、観音扉かんのんびらきを八文字に、格子もめぬほこらがある。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平安朝には袴垂保輔はかまだれやすすけ、源平時代には熊坂長範くまさかちょうはん、これ本朝の二大賊じゃ! それにもまさった大盗心をそなた蔵しておろうがの! いいや隠しても隠されぬわい! 老人の眼は浄玻璃じょうはりじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吉次は、慚愧ざんきいたしております。……熊坂長範くまさかちょうはんなどをけしかけたのはまったくてまえの悪戯いたずらでございますが、もう、あなた様には、どうあごで使われても、吉次は腹も立たなくなりました
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
熊坂長範くまさかちょうはんくらいなものだろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)