烏鷺うろ)” の例文
その主人は私の碁敵で、いつもよくひまの時烏鷺うろを戦わせていたのです。それで大抵の場合、私自身が煙草を買いに行きつけていたのです。
悪魔の弟子 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
差当つて仕事ができないし、やがて幻に烏鷺うろを睨んで寒中浴衣で蹌踉と巷を歩くやうになり、早死してしまうからである。
生命拾ひをした話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
夢中で烏鷺うろを戦わしている両人には容赦ようしゃなく、伝二郎が気がついたころには、それこそ稀有けうの大雨となって
庭の秋陽のあおりを受けて、この部屋はほのかに明るくて、そうして静かできよらかであり、その中で烏鷺うろをたたかわせる、石の音ばかりがしばらくつづいた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
名誉と家禄かろくを賭けた血の出るような争い碁も興ある烏鷺うろの戦となる。しかも交互におく黒白の一石は自分の恥しい俗手凡手ではなくて本因坊の、井上因碩いんせきのそれである。
独り碁 (新字新仮名) / 中勘助(著)
良雪が碁盤ごばんを出せといつもの如くいうので、家族の者は二人のあいだへ盤と石を備えた。パチ、パチというもの静かな烏鷺うろの音が、すぐその部屋かられてくるのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋山もきょうは非番であったので、ひる過ぎからその隠居所をたずねて、例のごとく烏鷺うろの勝負を争っているうちに、秋の日もいつか暮れて、細かい雨がしとしとと降り出した。
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女はただはやぶさの空をつがごとくちらとひとみを動かしたのみである。男はにやにやと笑った。勝負はすでについた。舌を腭頭あごさきに飛ばして、泡吹くかにと、烏鷺うろを争うは策のもっともつたなきものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、かおってくる木犀もくせいにおい! パチッパチッと囲碁の音! 隣りで烏鷺うろを戦わせるらしい。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、さっそく、ばんにたいして、烏鷺うろたたかわせ始めた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外見はあくまでも閑々かんかんたる風流烏鷺うろのたたかい……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
虚実きょじつ烏鷺うろ談議
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)