濠際ほりぎわ)” の例文
そのとき城外の濠際ほりぎわで、何かわめきあう大声が聞えた。席にいた高坂弾正が、何事かと立って、狭間から首を出して覗き下ろした。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十四五間左の方へ濠際ほりぎわ目標めあてに出たら、漸く停留所の柱が見付った。神さんは其所そこで、神田橋の方へ向いて乗った。代助はたった一人反対の赤坂行へ這入った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明朝、そちの身を、大きな十字のくいしばりつけ、城下の濠際ほりぎわまで、兵どもにかつがせて参るゆえ、そちは十字架の上より、大音にてこう申せ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに大手の濠際ほりぎわには、下馬下乗、あまたの大名や旗本の駕籠かごがこみ合ッていて、供待の者どもが憂色をつつんでいる様子。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濠際ほりぎわ半町を隔ててい廻してあった第一柵も突破され、濠も石や草や土木に埋められ、寄手は駈け渡って来て、敏捷びんしょうに石垣の下にへばりつく。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤吉郎は、翌日、郎党ひとりに馬の口輪くちわらせ、ただ一名、焼け野原をトコトコ駈けて、高岡城の濠際ほりぎわまで来た。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次々に、こう伝えて、やがて彼の駒が、汗に濡れた毛並から白い湯気をたてながら、清洲城の濠際ほりぎわへ来た頃には、ちょうど東の空が明るくなりかけていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし甚内は、その三十余名に、途々みちみちで得た二百余名の野武士と農兵をもって、上野城の濠際ほりぎわへ迫った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひたひたと濠際ほりぎわに詰め寄せ、いかだを組み、水を渡り、何千の兵が、またたく間に、石垣へ取りついた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、お濠際ほりぎわ高札こうさつにも
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)