濁流だくりゅう)” の例文
隅田すみだ川の濁流だくりゅう、ポンポン蒸汽、伝馬船てんません、モオタアボオト等に囲まれ、せせこましい練習をしていた、ぼく達にとって、文字どおり、ドリイミング・コオスといった感じです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
わしがたち頃から近年にいたるまで、世は乱麻らんまのごとく、武門の道も、生きる道も、洪水こうずいのような濁流だくりゅうおかされ、正しく道をとろうにも、正しく進めず、正義にあろうとすれば
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒竜江の結氷が轟音ごうおんとともに破れ、氷塊ひょうかいは、濁流だくりゅうに押し流されて動きだす春がきた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そうして、ついにむかえた八月十五日である。濁流だくりゅうが、どんな田舎いなかの隅ずみまでもしよせたような騒ぎの中で、大吉たちの目がようやくさめかけたとしても、どうしてそれを笑うことができよう。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
やがて、寄せ陣の敵が、傾斜を必死に這いのぼり、あらまし断崖の半ばごろにいたると、城中にも合図のかねが鳴りとどろき、傾斜全面にわたって、乾いた土砂が濁流だくりゅうのようになだれて来る。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)