海老鞘えびざや)” の例文
見ればこの人はまだ眼を開かないけれど、炬燵こたつの中から半身を開いて、かたえに置いた海老鞘えびざやの刀を膝の上まで引寄せているのでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たもつさんの記憶している五百いおの話によるに、枳園はお召縮緬めしちりめんきものを着て、海老鞘えびざや脇指わきざしを差し、歩くにつまを取って、剥身絞むきみしぼりふんどしを見せていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、芝居者が、駈けつけて来てみると、益太郎は、腰の海老鞘えびざやかんぬきり打たせて
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
定紋じょうもんはなごま博多はかたの帯を締めて、朱微塵しゅみじん海老鞘えびざやの刀脇差わきざしをさし、羽織はおりはつけず、脚絆草鞋きゃはんわらじもつけず、この険しい道を、素足に下駄穿きでサッサッと登りつめて