浅碧あさみどり)” の例文
それも暫しの程で、間もなく浅碧あさみどりに冴えた氷の滝が行手を塞いでいる。水は依然として其上を流れているが、滑って危険で到底之を登る訳には行かぬ。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
不動祠ふどうしの下まで行きて、浪子は岩を払うてしぬ。この春良人おっとと共に坐したるもこの岩なりき。その時は春晴うらうらと、浅碧あさみどりの空に雲なく、海は鏡よりも光りき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
碧色——三尺の春の野川のがわおもに宿るあるか無きかの浅碧あさみどりから、深山の谿たにもだす日蔭の淵の紺碧こんぺきに到るまで、あらゆる階級の碧色——其碧色の中でもことあざやかに煮え返える様な濃碧は
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
而して一鳥ぎらず片雲へんうんとどまらぬ浅碧あさみどりそらを、何時までも何時までも眺めた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
珍しくうららかに浅碧あさみどりをのべし初春の空は、四枚の障子に立て隔てられたれど、悠々ゆうゆうたる日の光くまなく紙障にえて、余りの光は紙を透かして浪子が仰ぎしつつ黒スコッチのくつしたを編める手先と
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)