洶々きょうきょう)” の例文
易水剣を按ずる壮士は慷慨激越して物情洶々きょうきょう、帝都は今にも革命のちまたとならんとする如き混乱に陥った。
ために東京湾の砲台を築かしめ、人心も何となく洶々きょうきょうたらんばかりの有様とはなりぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世上むしろ此の宰相有らんや。内外駭訛がいか、人情洶々きょうきょう、若し急に斧※ふしつの誅を加えずんば、勢必ず操莽そうぼうの禍を醸成せん。臣夙夜しんしゅくやつつしみ懼れ、敢て寧処ねいしょせず。死を冒して列款れつかんし、仰いで宸聴しんちょうに達す。
続黄梁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
地に穴し瀦水ちょすいしてこれを蓄え、いまだ日をえざるにその地横についえ水勢洶々きょうきょうたり、民懼れ鉄を以てこれに投じはじめてむ、今周廻ひろばかりなるべし、水清澈せいてつにして涸れず〉とあれば
知れる目よりはこの大山たいさん巌々がんがんとして物に動ぜぬ大器量の将軍をば、まさかの時の鉄壁とたのみて、その二十二貫小山のごとき体格と常に怡然いぜんたる神色とは洶々きょうきょうたる三軍の心をも安からしむべし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
加うるに葡萄牙ポルトガル西班牙スペイン人らは、その西南諸島に加うる権詐けんさ詭奪きだつの手段を以て我に向わんと欲し、しこうして内国の人心は洶々きょうきょうとして、動乱の禍機かきややもすれば宗教をりて、脚下きゃっかに破裂せんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)