泥臭どろくさ)” の例文
潮の落ちた時は沼とも思わるる入り江が高潮と月の光とでまるで様子が変わり、僕にはいつも見慣れた泥臭どろくさい入り江のような気がしなかった。
少年の悲哀 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何處からと無くなまぐさいやうなどぶ泥臭どろくさいやうな一種いやな臭が通ツて來てかすかに鼻をつ……風早學士は、此の臭を人間の生活が醗酵はつかうする惡臭だと謂ツてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
幸い持合せのちと泥臭どろくさいが見かけは立派な円筒形えんとうけいの大きな舶来はくらい唐墨とうぼくがあったので、こころよく用立てた。今夜見れば墨痕ぼくこん美わしく「彰忠しょうちゅう」の二字にって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
チャイコフスキーには、ロシア的な泥臭どろくささと野蛮な情熱は少しもない。彼はあくまでヨーロッパ的で、ロマンティックで、バイロン的であるとさえ言われている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
昔のロシアの民謡としては、代表的に良いもので、その泥臭どろくささが人をきつける。