法然天窓ほうねんあたま)” の例文
火鉢の向うにつくばって、その法然天窓ほうねんあたまが、火の気の少い灰の上に冷たそうで、鉄瓶てつびんより低いところにしなびたのは、もう七十のうえになろう。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小商人こあきんど風の一分別ありそうなのがその同伴つれらしい前垂掛まえだれかけに云うと、こちらでは法然天窓ほうねんあたまの隠居様が、七度ななたび捜して人を疑えじゃ、滅多な事は謂われんもので、のう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と苦笑いして、……床の正面に火桶を抱えた、法然天窓ほうねんあたまの、つれの、その爺様を見遣って
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「豪儀だな、そいつあ、」とくるりと廻った、かしら法然天窓ほうねんあたまは竈の陰に赫々てかてかして
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
染めようにもひげは無いで、わしはこれ、手拭でも畳んで法然天窓ほうねんあたませようでの。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭主は法然天窓ほうねんあたま、木綿の筒袖つつそでの中へ両手の先をすくまして、火鉢ひばちの前でも手を出さぬ、ぬうとした親仁おやじ女房にょうぼうの方は愛嬌あいきょうのある、ちょっと世辞のいいばあさん、くだんの人参と干瓢の話を旅僧が打出すと
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)