法力ほうりき)” の例文
これはすべて輪廻りんね造顕ぞうけんによることでござって、まして、限り知れたわれらの法力ほうりきでは、その呪いからのがれしむることはむずかしゅうござる
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
所がその中に、思いもよらず、また私どもは摩利信乃法師の神変不思議な法力ほうりきに、驚くような事が出来たのでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたのようなとうといお上人しょうにんさまにおにかかったのは、わたしのしあわせでした。どうかあなたのあらたかな法力ほうりきで、わたしをおすくいなすってくださいませんか。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
源氏物語は如何にまじないが一般的であったかを語っており、法力ほうりきが尊いものであるかを語っている。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして次第に法力ほうりきを得て、やがてはさきにも申した如く、火の中に入れどもその毛一つも傷つかず、水に入れどもその羽一つぬれぬという、大力の菩薩ぼさつとなられたじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それから其品それを戴いてこっちに帰って参りました。すでにその時に約束した、明日はマニの秘密法力ほうりきを秘密に授けてやるといいますから、ありがたい事と心得てその翌日
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
人間業にんげんわざでこの火を防ぐはあの護摩壇の法力ほうりきあるばかりだと、そこへ気がついた各村の総代は、打揃って裸になって水垢離みずごりをとって、かの護摩壇の修験者へ行って鎮火の御祈祷を頼むと、修験者は
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
誰にはゞかるところもないのだが、たゞ貴僧は法験ほうげんがめでたくおわしますので、貴僧の法力ほうりきで抑えられるのが一番恐ろしい、何卒なにとぞ年来の師壇のちぎりを思って、たといその折朝廷からお召しがあっても
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鍛冶の親子は互にしっかりいだき合いながら、まだ土の上にうずくまって居りましたが、沙門の法力ほうりきの恐ろしさには、魂も空にけし飛んだのでございましょう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
マニの秘密法力ほうりき を授かるつもりでその夜は休みました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
またもし、摩利信乃法師の申し条に疑いあって、仏菩薩が妖魔か、天上皇帝が邪神か、決定けつじょう致し兼ぬるとあるならば、いかようにも法力ほうりきくらべ合せて、いずれが正法しょうぼうか弁別申そう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)