油画あぶらゑ)” の例文
旧字:油畫
日本の話をしたあとで近日から自分がこの画室へ油画あぶらゑの稽古に通はして貰ふ約束などをして、氏と別れてリユクサンブル公園へはひつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
山田右衛門作やまだゑもさく天草あまくさの海べに聖母受胎じゆたい油画あぶらゑを作つた。するとその聖母「まりや」は夢の階段を踏みながら、彼の枕もとへくだつて来た。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
註文ぬしは画家の手からその油画あぶらゑを受取つたが、ちらと画面を見ると、その儘黙つて押しもどした。
壁にけたる油画あぶらゑに、あるはおぼろに色めし
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
南画は胸中の逸気いつきを写せば、他はいて問はないと云ふが、この墨しか着けない松にも、自然は髣髴はうふつと生きてゐはしないか? 油画あぶらゑしんを写すと云ふ。
支那の画 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
尤も書と一緒に油画あぶらゑ水画みづゑの一枚も、頼む事が出来たらそれはまた別の話で、そんな折には不折氏は閑潰しな道楽文字を書いて呉れるばかしか、書の講釈までも聞かせて呉れる。
アトリエには彼自身の油画あぶらゑほかに何も装飾になるものはなかつた。巻煙草まきたばこくはへた断髪のモデルも、——彼女は成程なるほど混血児あひのこじみた一種の美しさを具へてゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)