河縁かわべり)” の例文
結局は河縁かわべりへ水を汲みに行って、滑り落ちて海の方へ押流されて、ふかにでも食われたんだろうという事になってしまいました。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さざなみさえ打たない静かな晩だから、河縁かわべりとも池のはたとも片のつかないなぎさ景色けしきなんですが、そこへ涼み船が一そう流れて来ました。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして下町の河縁かわべりにある、シュリイフォオクト氏の大きな材木店に、見習いとして入った。
道化者 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
分寿々廼家のお神と内箱のおばあさんとで、看板をもった車夫を一人つれて、河縁かわべりを捜しにやって来た時、銀子は桟橋さんばしにもやってある運送船のみよしにある、機関のそばにじっとしゃがんでいた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一時少し前にうちを出た津田は、ぶらぶら河縁かわべりつたって終点の方に近づいた。空は高かった。日の光が至る所にちていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十七歳で、彼は商人になるために学校を退いた。彼の仲間内では、誰も彼も商人だったのである。そして下町の河縁かわべりにある、シュリイフォオクト氏の大きな材木店に、徒弟として入った。
お延は叔父の送らせるというくるまを断った。しかし停留所まで自身で送ってやるという彼の好意を断りかねた。二人はついに連れ立って長い坂を河縁かわべりの方へ下りて行った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)