河内山こうちやま)” の例文
河内山こうちやま」がすんで、「盛綱陣屋もりつなじんや」が開く時分に、先刻から場席を留守にしていたお絹が、やっと落ち著いた顔をして、やってきた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのなかで私が新蔵について記憶している役々は「奴道成寺やっこどうじょうじ」の狂言師、「博多小女郎はかたこじょろう」の毛剃けぞり、「陣屋」の熊谷くまがい、「河内山こうちやま」の宗俊そうしゅんなどで
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下では、「へい、さようなら成田屋の河内山こうちやま音羽屋おとわや直侍なおざむらいを一つ、最初は河内山」と云って、声色こわいろを使いはじめた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
河内山こうちやまはこう云って、ちょいと言葉を切った。それから、次の語を云っている中に、だんだんかしらを上げて、しまいには、じっと斉広の顔を見つめ出した。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八五郎一ぺんに悄気しょげてしまいました。河内山こうちやまの芝居でも解る通り、寛永寺の役僧は見識のあったもので、町方の御用聞などは、指も差せるものではありません。
その後は三げんばかりの総襖そうふすまで、白い、藍紺あいこんの、ふとく荒い大形の鞘形さやがた——芝居で見る河内山こうちやまゆすりの場の雲州うんしゅう松江侯お玄関さきより広大だ、襖が左右へひらくと
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「アッハッハ。ノガミの浮浪者が、こんな出会いで集団強盗をくみやがるのさ。しかし、河内山こうちやまもこんなものだろうよ。ところが、アタシの考えは、もっと大きい」
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一路行き向かったところは、河内山こうちやま宗俊そうしゅんでおなじみのあの練塀小路ねりべいこうじでした。
久保町には高徳寺という浄土宗の寺があって、そこには芝居や講談でおなじみの河内山こうちやま宗春そうしゅんの墓がある。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
弁慶も助六も清正も家康も河内山こうちやまも説くには及ばない、この仲国ひと役でも団十郎に名人の尊称をあたえていいと、わたしは今でも思っている。新蔵の冷泉もよかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれはここで河内山こうちやまや由良之助や、鈴ヶ森の長兵衛や、寺子屋の源蔵や、紅葉狩もみじがりの鬼女や、その得意の団十郎物をそれからそれへと上演して、役々ごとに評判がよかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あなたはお芝居が好きだから、河内山こうちやまの狂言を御存知でしょう。三千歳みちとせ花魁おいらんが入谷の寮へ出養生をしていると、そこへ直侍なおざむらいが忍んで来る。あの清元の外題げだいはなんと云いましたっけね。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)