沢庵石たくあんいし)” の例文
旧字:澤庵石
「この墓銘ぼめい沢庵石たくあんいしり付けて本堂の裏手へ力石ちからいしのようにほうり出して置くんだね。でいいや、天然居士も浮かばれる訳だ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人足達が路の上へほうり上げたのは、まさに使い古りた沢庵石たくあんいし。五、六貫は確かと言った、泥とぬかまみれた真っ黒な丸石です。
城内から大きな沢庵石たくあんいし——は、ちと可笑おかしいから、大きな石臼を見つけてきて、これを目の上よりも高くあげて、寝台に睡る妖婆の頭の上にドーンとうちつける。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
米友は籠ぐるみ牛蒡抜ごぼうぬきにした恰好で抱き出して来て、そうして炉辺の一方へ押据えたが、動揺を防ぐために、のし板を持って来てあてがった上に、沢庵石たくあんいしかなにかを臨時の押えとして重しをかけ
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「曾呂崎が電車へ乗ったら、乗るたんびに品川まで行ってしまうは、それよりやっぱり天然居士てんねんこじ沢庵石たくあんいしり付けられてる方が無事でいい」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ、棺の中には、トラ十の身代りに、沢庵石たくあんいしか何かを入れておくわけですから、火葬炉かそうろの中でいくら油をかけて焼いてみたところが石は焼けませんからね。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次は水道橋へ来ると、橋の袂を捜して手頃な沢庵石たくあんいしほどの石を見付けました。
するとむこうに見える柳の下で、真裸まっぱだかな男が三人代る代るおおき沢庵石たくあんいしの持ち上げくらをしていた。やっと云うのは両手へ力を入れて差し上げる時の声なんだよ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたしは、拾ってきた懐中電灯で、足許あしもとに転がっている沢庵石たくあんいしの倍ほどもある大きな石を照した。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
野だは大嫌だいきらいだ。こんなやつ沢庵石たくあんいしをつけて海の底へしずめちまう方が日本のためだ。赤シャツは声が気に食わない。あれは持前の声をわざと気取ってあんな優しいように見せてるんだろう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「噴火口は実際猛烈なものだろうな。何でも、沢庵石たくあんいしのような岩が真赤になって、空の中へ吹き出すそうだぜ。それが三四町四方一面に吹き出すのだからさかんに違ない。——あしたは早く起きなくっちゃ、いけないよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)