汗馬かんば)” の例文
出城でじろの衆では、深溝ふかみぞの城主、松平家忠が、三里の道のりを、汗馬かんばを飛ばして駈けつけて来たのが、到着第一であった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一瞬ののち、太郎は、惨として暗くなった顔に、片目を火のごとくかがやかせながら、再び、もと来たほうへまっしぐらに汗馬かんばおどらせていたのである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
英雄豪傑の汗馬かんばのあとを、撫子なでしこの咲く河原にながめて見ると、人は去り、山河は残るというおもいが、詩人ならぬ人をまでも、詩境に誘い易いのであります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
始め暫時しばし其所に待居まちゐければ此は如何なる事やと思ひける中程もあらせず城下の方より汗馬かんばむちあて御巡見使よりの御差※さしづなり九助を早々引戻ひきもどせと大音だいおんに呼はるをきゝ檢使の役人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ジオンのたたかいたけなわなるに我は用なきつわものなれば独り内に坐して汗馬かんばの東西に走るを見、矢叫やさけびの声、太鼓の音をただ遠方に聞くにすぎず、我は世に立つの望み絶えたり、また未来に持ち行くべき善行なし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)